トロピカルフルーツを拾いました

道の真ん中で、トロピカルフルーツを拾いました。
いわゆる一つのマンゴーです。
でも、何か変だ。
拾い上げたところ、あの、マンゴー独特の「ずっしり感」がないのです。
不思議に思った僕は、右手には拾ったマンゴー、左手には架空のずっしりとしたマンゴーを持って、てんびんのようにゆらゆらしていました。
「何をしているんですか?」
ゆらゆらしている僕のわきを通り、一度は横断歩道を渡りきった男が、戻ってきて僕に言いました。
よっぽど気になったのでしょう。
「これをもってみれば、わかります」
そういって僕は、男の右手にマンゴーを乗せます。
男は、初めは不思議な顔をしていましたが、しばらくすると、僕がやっていたように両手をゆらゆらしだしました。
「ああ、なるほど。確かに、ゆらゆらしちゃいますね」
「ゆらゆらしちゃうでしょう?」
僕らはそう言って、少しだけ笑いあいました。