リアル・バーチャルペット


「あなたも、リアル・バーチャルペットになってみませんか?」
深夜に延々とアングラなエロサイトを巡回していると、こんなバナーが目に付いた。
ちなみに、どうアングラなエロサイトかというと、ウェット&メッシーというジャンルのもので、出来ればこれ以上詳しい解説はしたくない!という種類のものだ。


・・・そらまあ、泥やペンキにまみれた裸体の女性で一杯のページに、ロンパリ気味で可愛らしい犬のマークが入ったバナーがあったら目立つわなあ。


ということで、僕のリアル・バーチャルペット生活はこんな感じで幕を開けたのです。


翌朝、「ご主人様からのメールが届きました」とモニタの右隅にメッセージが出た。
僕はそれなりの期待をもとに、バーチャル・ペットのペット専用ページにログイン。
Webカメラを通じて、ご主人様と初めてのご対面だ。
ご対面とは言っても、相手が見れるのはペットである僕の方だけで、ご主人様にはロンパリ気味のデフォルメされた犬の3D画像しか見えないわけだけど。
おお、これは当たりかもしれない。
年のころは20代後半、肩口まで伸びた真っ黒でまっさらな髪、ふちが太めのメガネがよく似合っていて、どうしてこんな怪しい癒し系サイトにお金を払ってまで参加しているのか、少々不思議な感じがする女性だ。


前言撤回。
Webカメラを通じて部屋の奥に見える大きな窓が、X型の木枠で打ち付けられている。
当然雨戸はガン閉めで、部屋の明かりは何かろうそくのような、ゆらめく炎状のものでとられているようだ。
どうりでこんな早朝から妙に薄暗いわけだ。
これは一発目からヤバイのを引いたか、と暗たんたる思いに沈んでいると、彼女が語りかけてきた。
「こんにちは♪シロたん♪」
・・・どうやら、僕の名前は「シロたん」らしい。
とりあえず、ペットの感情コンソール「しっぽを左右に振る」をクリックして、ご主人様の反応を待つことにした。